チェックポイント
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屋外緑化技術資料

屋上緑化 計画・設計する上でのチェックポイント

屋上緑化の場合、建物構造から屋上に載せられる重さに制限があるため、植物の生育に必要な土壌が載せられる構造となっているか確認が必要です。また、屋上で植物を栽培しても水漏れの心配がないような防水仕様となっているかなども事前に調査しなければいけません。既存建物の屋上緑化の場合には次の5項目を確認した上で、計画・設計を進めることが大切です。

チェックポイント

チェックポイント
  1. 積載荷重条件のチェック
  2. 防水層の状態と改修の有無
  3. 給水設備と電源の有無
  4. 雨水排水の系統とルーフドレインの位置
  5. フェンスの高さなど転落防止対策

荷重条件内で植栽基盤(土壌と排水層)の確保と整備

屋上緑化の場合、建築の積載荷重条件を考慮する必要があります。下の資料を参照して計画・設計してください。

TLC パネルを使用した場合の植物と植栽基盤の厚さ及び荷重計算例

TLC パネルの高さ 150mm 220mm 300mm 450mm 600mm
TLC パネルの重さ
1m あたり
13.5kg/m
カコッタ150
基本パネルの場合
16.5kg/m
カコッタ220
基本パネルの場合
22.9kg/m
グラニット300
基本パネルの場合
28.4kg/m
グラニット450
基本パネルの場合
42.5kg/m
グラニット600
基本パネルの場合
基盤厚に適した植栽植物 地被植物類芝 草花・ハーブ
潅木類
野菜・低木・中木
(~1.5m前後)
果樹・中木
(~2m前後)
果樹・高木
(~3m前後)
軽量土壌の場合 マルチング 2cm 2cm 2cm 2cm 2cm
軽量土壌 8cm 15cm 23cm 28cm 53cm
排水パネル 3cm 3cm 3cm 3cm 3cm
荷重 93kg/㎡ 153kg/㎡ 221kg/㎡ 348kg/㎡ 475kg/㎡
改良土壌の場合 マルチング 2cm 2cm 2cm 2cm 2cm
改良土壌 8cm 15cm 23cm 28cm 53cm
排水パネル 3cm 3cm 3cm 3cm 3cm
荷重 129 kg/㎡ 220 kg/㎡ 324 kg/㎡ 519 kg/㎡ 714 kg/㎡
  • 軽量土壌の比重:0.85、改良土壌の比重:1.3、排水層の比重:0.6、排水パネルの重さ:5㎏/㎡、マルチングの比重:1.0 として計算。
  • 芝やタマリュウのマット張りの場合にはマルチングは不要。

樹木の重さ(参考例)

芝生 18㎏/㎡前後
潅木類(樹高30cm前後) 2㎏/本前後
潅木類、地被植物密植 25~30㎏/㎡前後
生垣(2~3本/m) 40~50㎏/㎡前後
樹高2m前後の中木 30㎏/本前後
樹高3m前後の高木 50㎏/本前後
樹高4m前後の高木 200㎏/本前後

主な外構資材の比重

木材(ウッドデッキ)の比重 0.9 前後
御影石の比重 2.8 前後
レンガの比重 2.0 前後
コンクリートの比重 2.3 前後
砂利、砂の比重 1.7~2.1 前後
火山砂利の比重 0.8~1.4 前後

環境条件に適した植栽の選定

樹木を選定する場合は、植栽基盤厚に適した形状寸法の樹木を選んでください。
風が強い場所では、風の影響をあまり受けない背の低い植物を植えるなどの植栽計画としますと維持管理が容易となります。
生垣に使用する樹木は、耐風性や耐乾燥性のあるイヌツゲやウバメガシなどの樹木が適しています。キンモクセイなどの高木は適しません。

植栽基盤の整備(排水)

植物の根による漏水防止対策

TLCでは、耐根シートおよび耐根補助シート(ポリエチレンビニールシート・0.3mm)で植物の根が防水面・床面に進入するのを防止して防水層を保護します。

  • 自着型耐根シート

  • 耐根補助シート

排水層の整備

排水層の資材

屋上に使用する排水層の資材には、軽量で通気性のあるパーライトや、排水層と貯水性の機能を持たせた排水パネルを使用します。野菜栽培などでは土を耕すため、排水パネルを使用します。

  • 保水・排水・通気パネル

    保水・排水・通気パネル

  • 貯排水マット

    貯排水マット

  • 黒曜石パーライト

    黒曜石パーライト

土壌の流出防止対策

土壌中の水分を排出しながら、土壌の流出を防止するため、透水性にすぐれた化学繊維の不織シートを使用します。

  • 防水フィルター

保水排水システムセットのご案内

  • 耐根補助シート

    耐根補助シート

  • 貯排水マット

    貯排水マット

  • 透水フィルター

    透水フィルター

参考価格

TLC-6H

¥39,800税抜)/6㎡セット

植栽基盤の整備(土壌)

屋上緑化に適した土壌

屋上緑化に使用する土壌には、パーライトやピートモスなどを混入して軽量化した改良土壌、軽い土壌改良資材や火山砂利などを主成分とした人工軽量土壌があります。一般的には有機質混合の人工軽量土壌を使用します。また、養分要求量は造園樹木と草花では異なります。一般的に野菜が一番養分要求量が多く、次に草花、ハーブ、家庭果樹、花木、針葉樹の順になります。植栽する植物に適した土壌を選ぶことが管理にも影響することになります。

  • 人工軽量土壌

    人工軽量土壌

  • 園芸培養土

    園芸培養土

土壌の通気性の確保(根腐れ防止)

植栽の根腐れ防止対策として、「酸素管」 を使用します。「酸素管」 とは筒状にした溶存酸素能力を持つホワイトローム※です。植栽基盤の排水層と外気をつなぎ、植物の根に必要な酸素を供給する役目を果たします。
※ホワイトローム: 黒曜石を1,000°C以上の高温で焼成発泡させた無機質、超軽量の土壌改良資材。

  • 酸素管

    酸素管

マルチング材の敷設

マルチングとは、植物の根元に敷きわらなどを敷いて、乾燥防止や保温、雑草の繁殖防止などを行うことをいいます。屋上緑化では、土壌の飛散防止や乾燥防止のために、表層を人工発泡石や火山砂利、レンガ砕石、バークチップなどで、マルチングします。風が強い場所では飛散防止のためにやや重いマルチング材を使用します。

  • 針葉樹皮・長繊維

    針葉樹皮・長繊維

  • 火山砂利

    火山砂利

  • デコレーション・バークチップ

    デコレーション・バークチップ

  • 広葉樹皮チップ

    広葉樹皮チップ

雨水排水上の留意点

雨水排水の対策として、ルーフドレンの設置を推奨します。下記に留意して施工を行ってください。
① ルーフドレンはTLCの植え込みの外になるようにし、定期的に点検ができるように計画してください。
② 植え込み内にドレンを設置する場合、点検可能な桝を必ず設け、ルーフドレンの回りは耐圧透水板や パーライト詰め透水管などを敷設して空隙をつくり、速やかな排水を図ってください。

  • 排水口点検カバー

    排水口点検カバー(左:タテ型/右:ヨコ型)

樹木の風対策

屋上では、吹き下ろしや吹き上げ風などもあり、強風に見舞われることがたびたびあります。必要に応じて壁や防風ネットなどによる風速の減速、支柱による風倒防止、マルチングなどによる土壌飛散防止や乾燥防止対策をしてください。
一般的な屋上では支柱を支えるほどの植栽基盤厚はなく、従来型の風除け支柱が使用できません。抵抗板などを設置して根鉢を地中で固定する樹木地下支柱などの方法で支持してください。

  • 横打ち式 根鉢ホールド型地下支柱

    横打ち式 根鉢ホールド型地下支柱

  • 横打ち式 根鉢ホールド型地下支柱

    横打ち式 根鉢ホールド型地下支柱

潅水設備の設置

屋上などの人工地盤では、地下からの水分供給がないため、乾燥害の影響を受けやすく、一般的には、専用の潅水設備を設けて日常的に潅水する必要があります。

  • 人工軽量土壌で、降雨利用の無潅水型の場合でも、天候や植物の水分要求に応じた潅水が出来るように散水栓は必ず設けてください。
  • 手撒きまたは清掃用、手動または自動潅水用の散水栓の2口を設置することが望ましいとされています。
  • 自動潅水の場合、点滴パイプを使用し、雨水センサーとタイマーの連動が一般的です。
  • 芝生地の場合は、ポップアップ式スプリンクラーか移動式スプリンクラーなどを使用すると便利です。
  • 潅水装置 設置例

    潅水装置 設置例

  • 潅水装置

    潅水装置

安全対策

屋上やベランダにガーデンを計画する場合、積載荷重や漏水防止などの建物に対する安全対策とともに、転落防止や枯れ枝や物などの落下防止など安全への配慮を充分考慮する必要があります。下の4項目について充分注意をしてください。

  • 手すりの高さを、110cm以上にしてください。
  • 花壇の縁に足をかけて転落しないように充分配慮して設計してください。
  • 足がかりになるものを設置しないようにしてください。
  • ラティスの場合も高さを 110cmとし、小さな子供がいる場合には、足がかからない形状のラティスを選んでください。